2023年1月12日、「IKYU MANABIBA」に小児外科医の吉岡秀人医師が登壇してくださいました。
特定非営利活動法人ジャパンハートの最高顧問でありながら、今も1年のほとんどをミャンマーやカンボジア、ラオスでの無償の医療活動に費やす吉岡先生。なんと1日15件もの手術をこなされるといいます。多忙を極めるなか、この日はわずか10日あまりの日本滞在初日に成田空港から駆けつけてくださったのですが……そんな疲れは一切感じられない、熱のこもったお話を聴くことができました。


第1部は、スライドを用いた吉岡先生による講演。生い立ちや医師を志した理由から、人生の岐路、日々の葛藤、そして今後の夢まで――。一つひとつが深く、心を揺さぶられるような内容でした。症例として見せていただいた痛ましい写真は、思わず目を背けてしまいそうになるものも。それでも、病と懸命に闘う患者さんやそのご家族、全力で向き合う医療スタッフの皆さんの姿や、術後の子どもたちの笑顔を通して、ジャパンハートのミッションである「医療の届かないところに医療を届ける。」ことの意義に触れることができました。
第2部は、昨年同団体の理事に就任した弊社社長・榊とのトークセッション。そして第3部は質疑応答。いずれも事前に用意した内容・質問ではありませんでしたが、どんな問いにも真っ直ぐ丁寧にお答えいただきました。また、医療を通して語られた吉岡先生のご経験や人生観は、ビジネスや子育てに通じるものも多く、参加者それぞれの心にそれぞれの想いが刻まれた最高の「MANABIBA」となりました。
世界で活躍される吉岡先生が、一休社員だけに語ってくださった貴重な内容。今回は、トークセッションと質疑応答の内容を、ほんの一部ですが抜粋してご紹介します!
一休社員が社外の方と交流するきっかけにと立ち上げられた企画。さまざまな領域の第一線で活躍される方々に、“ここだけの話”をざっくばらんに語っていただき、学びを深める場です。
榊:ジャパンハートの理事に就任した昨年、ミャンマーとカンボジアの施設を訪問する機会をいただきました。そこで実際に目にして驚いたのですが、吉岡先生は朝病院に着いて、「じゃあやりますか」と手術室に入っていって、そこから15時間も連続で手術をされるんですよ。
吉岡先生(以下、敬称略):もうずっとそうなんですよ。よく体力ありますねって言われるんですけど、僕は普通の体力はないんです。ただ、野球をやっている人には野球用の筋肉がつくように、医療者には医療用の体力があるんだと思います。
榊:病院で、手術を受ける子どもとかお母さんとか、いろいろな方が笑顔でいらっしゃるんです。手術が楽しみ、みたいな。その方々をどんどん治療していく――。もう途中から神様に見えました。それで、他の医療スタッフの皆さんも素晴らしくて、この組織は神様がいっぱいなんだなと思いました。たとえば僕を案内してくださった先生も、一歩進むと患者さんがワーッと寄ってこられて会話して、また歩くとワーッと寄ってこられて、という感じですよね。
吉岡:彼女も患者さんからすると女神かもしれませんね。
僕には気を付けていることがあって、それはあまり患者の前に出ないことなんです。若い先生や看護師さんって、ここにいる皆さんもそうだと思うんですけど、認められるとか期待されるとかってすごく大切じゃないですか。でも僕が出ていくと、皆さん一番上の人に向かって御礼を言ってくれるので、若い方のその機会を奪うことになるんですよ。なので、トラブルがない限りは病棟には出ないようにしています。
これには、ターニングポイントがありました。人は、自分にバリューがあるっていう自己認識が確立すると、もうそこからは誰かに追認してもらわなくてもよくなるんですよ。だからもう御礼とかはもらわなくて良くて、手術をした人が嬉しそうに帰っていくだけでいいんです。
御礼よりも今は何を意識しているかというと、その場で僕がベストパフォーマンスをできたかどうかだけです。バッターボックスに入ったらとにかく全力で振る。自分が納得いくスイングができたら、何ていうんですかね、幸せだから。そうじゃなければ、手術の結果がうまくいってもストレスになるんですよね。
たとえば、難しい手術の場合だと、多くの医師の知恵を借りて事前に治療方針を決めて手術に臨むことがあります。フレームが出来上がっていてその通りにやるんですけど、実際に手術をしてみると、途中で「こうやった方がいいんじゃないか」と思うことがあるんですよ。でも、フレームがあるから自分の思考が制限されちゃって、それがすごくストレスになるんです。そのストレスを抱えながら次の手術に挑んでいくと、たぶんそれがちょっとずつ修正されていくんだと思います。
榊:1日15件もの手術をして、今日はぜんぶ良かったなっていう日もあるんですか?
吉岡:そういう日もないことはないと思うんですけど、人間って良いことは記憶に残らないじゃないですか。上手くいかなかったことばかり記憶に残っています。
榊:たしかに、そういうものですよね。
現地の病院に行ったり理事会に出ていたりすると思うのは、言い方が合っているかわからないのですが、皆さんとってもいい人ですよね。たとえば、若い看護師さんにカンボジアに来た理由を聞いたら、最初は「国際医療がやりたくて」と答えるんですけど、もっと聞いていくと、すごく深いことを仰るんです。日本の医療は私じゃなくてもできる仕事だと感じたとか。その方は人を助けたいと思って看護師になって、数年間東京の病院で働いていて、たとえば8時になったらこの点滴をしてくださいとか、決まったことをやるロボットみたいな仕事に感じたそうです。それで、国際医療をやられている吉岡先生に憧れてカンボジアに来て、先生は手術をしたらあとは任せてくれるスタイルなので、私はその患者さんに向き合って、どういうことをすれば患者さんにとってよりよい生活を送れるかってことだけを考えていける。これが私は楽しいと仰っていました。ああ、なるほど、すごいなと思いましたね。貢献感ってこういうことなんだと。
そして一番おどろいたのは、彼女はそのカンボジアの病院でボランティアをするのに参加費を払っているんですよね。自分が貢献したいっていうことに取り組むことが本当の価値で。それを聞いた時に本当にもう転げ落ちそうになって。どういうこと?みたいな。
もっと聞くと、彼女はカンボジアの前の半年間は日本の離島で働いて、そこでちょうど参加費と同じくらいの給料をもらって、それを使ってカンボジアでボランティアをしているというんです。離島の看護師不足っていう問題と、国際医療の課題と、その2つをくっつけられたということです。すごいですよね、この話。吉岡先生はたぶんビジネスの天才なんだなと思いました。
吉岡:もともと日本国内の離島医療も足りないところがいっぱいあるので、海外に来た看護師さんたちに、そっちも助けたいと思わない?って聞いたら、助けたいって言ったんですよ。じゃあ離島・へき地医療もやろうということで。まず半年間は日本の離島に貢献してください。その後に海外にコミットしてくださいっていう形で今はスキーム化しています。離島医療は給料が発生するので、彼らが国際ボランティアで払う参加費とトントンであれば、お金のストレスがかかりませんよね。それでいけるんじゃないかっていう発想でやったんですよ。
榊:お金を払って世の中に貢献したいことをやるっていうのが尊いですよね。自分がこの世の中で生きている意味っていうのを彼女たちはすごく考えていて、なんかいいなと思いました。
吉岡:自分がそうだったから違和感がなかったんですよ。
榊:私たちには違和感があります……
吉岡:参加費を払ってもらうことで、本当にやりたい人が来てくれるようになりました。たとえば、アメリカの大学に留学すると何百万円もかかりますよね?海外旅行するのだってお金がかかるじゃないですか。それと何が違うの?っていう感覚なんですよね。
榊:たしかに。自分が生きている意味はこういうことだって定義されて、それをやっていらっしゃる方が、吉岡先生だけじゃない。いっぱいいらっしゃるんだなと感じました。

社員①:講演の中で、“自分が倒れた後に、若い人たちにその背中を踏みつけていってほしい”と仰っていたのが印象的でした。先生が、一休や日本の若者に求めていることや期待していること、僕らができることって何がありますか?
吉岡:前を行く人たちが希望をもって先立てる環境って、託せる人がいて、未来が明るいことなんですよ。だからそういう風な社会に変えていってくれたらいいのかなという気はします。時代が大きく変化していく中で、皆さんには次の新しい時代のフレームを創っていってもらうことを期待していますね。僕らは知らない間に日本社会のフレームに押し込まれている。常に柔らかい視点を持つことで、その古い型を壊して新しい時代のフレームを創っていって欲しいなと、すごく思います。
まあ、いろいろなことをやったらおもしろいですよね。たとえば、僕は小児外科医じゃないですか。外科医という1つの柱の中にはヒエラルキーがあって、そこで自分のいるポジションが社会的地位になりますよね。でも、外科医であること以外にいくつか自分のポールを立てておけば、より価値が生まれると思うんです。皆さんの場合、たとえばプログラミングができるとか、外国語ができるとか、そういった柱が3つ立てられれば、それによってつくられる立体の形が自分の高さになる。それぞれレベルの差があっても、その立体の形が個性で、その容積がキャパシティになるのです。そして、そのポールの立つ位置が複雑になれば自分と重なる人はいなくなってくる。そうすると、その部分の要件は自分のところに来るじゃないですか。そういう時代になってくるので、僕はいろいろなことをやってみたらいいんじゃないかなと思っています。

社員②:お話を聞く前まで、吉岡先生の原動力は、きっと患者さんからの御礼の言葉とかそういうものなのかなと思っていた自分が浅かったなと今感じています。自分のバリューを感じられればもう要らないっていう言葉を聞いて、それと自分を比べたときに、まだまだ私はですね、どちらかというと褒められることを原動力に頑張っているので……
吉岡:いいんですよ。それはすごく大切なことです。
僕らは宇宙に放り出された意識体みたいなもので、漆黒の宇宙空間の中で、最初は肉体があるかどうかわからない。ではなぜ肉体があることを理解できるかというと、星の光があるからなんですね。星の光に照らされて、自分の手脚が動くことが分かってくる、自分の姿が分かってくる、そうすると自分は肉体を持つものだと理解されてくる。この星の光っていうのが世の中なんです。世の中があるから自分の価値を認識できるんです。
なぜ自分に価値があると思えるかというと、それは人から価値があるって言ってもらったからなんです。ここがいいねって認知してもらったからです。自分が何かすることによって、周りの人たちが情報を発信してくれるわけですね。それが蓄積していって、自分の中の否定的なイメージを塗り替えていくぐらい集まっていくと、自分に価値があると思えてくるんです。それがどんどん積み重なっていけば、もう疑いもなく価値があるって思えるようになるわけです。そこまで来るともう積み上げなくてもよくなるのですが、そのバランスがまだ悪いときは積み上げていかないといけないですよ。
人は、価値があると感じられるから自分のことが大切だと思えるわけですね。そのために最初にやるべきことは、自分に価値があると認識することなので、それにはやっぱり人のために何かすること以外に方法はないんだと思います。
・「等価交換ではなくgiveの精神」という考え方がとても心に残りました。日頃の行動の中で意識的に取り入れていこうと思います。
・今も開発途上国 での活動を続けている吉岡先生のお話は、とても心打たれるものがありました。私自身PCに向かい仕事をすることが多いため、果たして自分の仕事が人の役に立っているのか、ふと疑問に感じることがあります。先生のように直接的に誰かを助けることはできませんが「バタフライ効果」で、どこかの誰かを幸せにするお手伝いができていればいいなと感じます。
・自分に自信がなく、仕事をしていく上でも悩むことが多くありました。得意なことを3つ作ってオリジナリティを出していくことや、自分に価値があると思えるまでのマインドプロセスなど、心に響く気付きをたくさんいただきました。
・今この瞬間を最大限楽しみながら、リスクを恐れずに行動したいと思いました。
・自分ができることを考えすぐに行動している姿や、自らの仕事に誇りを持ち徹底的に突き詰められている姿に、大変刺激を受けました。自分の枠を決めずに前を向いて突き進んでいきたいと強く感じました!
・自分の一生をかけてやりたいことについて、毎日の忙しさの中で考えることを忘れがちなのですが、自分のために今一度考えよう、動き出そうと、吉岡先生のお話を聞いていて強く思いました。また一歩、踏み出せそうです。ありがとうございました。
・吉岡先生は自分のやりたいことをやっていて、その結果として人の役に立っているのだということが、一番印象的でした。てっきり根っからの利他主義で、世のため人のためにという聖人なのだと思っていましたが、根底は自分がやりたいことであるということが非常に驚きでした。私も自分が真からやりたいことを突き詰めて、その結果周りの役に立てるようになりたいと思いました。貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。


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